土浦市側には大池を中心に周囲には約100ヘクタールの緑地がひろがり、常磐自動車道で分断されたつくば市側の天王池を中心とした地域とあわせて約200ヘクタールと関東最大級の里山です。
標高25mほどの丘陵に、谷津が複雑に入り組んで、湿地、小川、広葉樹林、竹林、杉や檜の植林地、 草原、谷津田、畑など、複雑な自然環境を作っています。 流れ込む川はなく、周りにある林や草原が池の水源です。
標高25mほどの丘陵に、谷津が複雑に入り組んで、湿地、小川、広葉樹林、竹林、杉や檜の植林地、 草原、谷津田、畑など、複雑な自然環境を作っています。 流れ込む川はなく、周りにある林や草原が池の水源です。
豊かで貴重な自然
魚
大池には多くの種類の魚たちがいますが、近年は、ブラックバス、ブルーギルなどの外来魚、アメリカザリガニやウシガエルなどの外来生物が大きな問題となっています。
植物
落葉樹が芽吹く春、宍塚大池の雑木林が美しく輝きはじめます。 林のあちらこちらに山桜が咲
き、 道ばたや林にスミレや春をいろどる草花(写真は、イチリンソウ)がつぎつぎと咲きそろいます。 新緑におおわれた林も、晩秋にはあざやかに紅葉します。
き、 道ばたや林にスミレや春をいろどる草花(写真は、イチリンソウ)がつぎつぎと咲きそろいます。 新緑におおわれた林も、晩秋にはあざやかに紅葉します。
大池周辺では、茨城県内で見られる植物の約3分の1にあたる、700種ほどが確認されています。 この豊かな多様性は水辺、谷津田、雑木林、草地、松林などさまざまな環境が広く入り交じっているためです。 国内各地で、その土地特有の植物が減り、外来種がめだつようになってきました。 しかし宍塚大池周辺の林には、昔から日本にある植物が数多く残っています。 ここは、里山の環境がよく保たれている貴重な場所なのです。
野鳥
スズメのように一年中見られるものの他に、東南アジアから繁殖に来るサシバ(写真)や、 秋に北国から冬越しにくるカモ、春秋に訪れるキビタキなどの旅鳥など、 見られる野鳥は多種にわたり、これまでに149種類(タカ・ハヤブサの類は11種)が確認されています。 冬には数百羽のコガモと、彼らをねらうオオタカの狩りのシーンに出会うこともあります。
昆虫
カブト虫、クワガタ、チョウ、トンボなどいろいろな昆虫が見られます。 いままでに69種のチョウが見つかっていますが、 これは日本に生息するチョウの4分の1以上になります。 これほど多くの種類が見られるのは落葉樹林、照葉樹林、湿地性の林、竹林、草地など チョウの幼虫が食べる植物がよくそろっていることと、チョウが好きな花がつぎつぎに咲くからです。
ツマキチョウ(=写真)は春先だけに見られるチョウです。 卵はタネツケバナに産みつけられ、幼虫はその実のさやによく似た細長い形をしています。 また、一年のほとんど(11カ月)をさなぎで過ごしますが、その形は植物のトゲにそっくりです。 鳥など敵の目を逃れてたくみに生きているのですね。
暮らしとの関わり
池を囲む里山はそのほとんどが私有地で、この一帯は大昔から人々の生活の場で、人々が長い間守り利用してきた林は、燃料や肥料、建築材料を得るものです。 また、木の実やキノコ、魚とりなどの自然の恵みを得るなど、さまざまな動植物と生活の場を共有して、人と自然共生の文化を育んできました。
池と林がセットになって、田畑と共に農家の生活を支える里山文化が長い間保たれてきましたが、 関東平野では、30~40年前にはどこでもふつうに見られたこのような里山は、戦後の経済成長に伴って急速に失われています。 宍塚大池周辺のように広い面積の里山がまとまって残っている場所は、極めて貴重な存在になってしまいました。
歴史と遺跡の宝庫
宍塚大池の北側には、丘のうえに25基の古墳があり、宍塚古墳群と呼ばれています(すでに、道路の整備などで6基は滅失)。そのほかに、旧石器時代後期(1万数千年前)からの各時代の遺跡など(埋蔵文化財)22ヵ所が知られています。
そのうち、上高津貝塚は、今から約4,000年~3,000年前の縄文時代後・晩期の遺跡で、国指定史跡となっています。また、栗崎遺跡では縄文時代の生活用具と古墳時代の祭りの道具が数多く発見されています。(上高津貝塚周辺の地形と遺跡分布図参照)
未来へ伝えたい
旧石器時代からの生活の場であり、つい最近まで、集落の里山として、様々な利用がされ、大切に管理されてきたこの貴重な里山を、地主・行政・市民の方々といっしょに、英知を結集し、豊かな里の自然と、 先祖のくらしの様子や願いを今に伝えてくれる貴重な遺跡を、文化遺産として残す方法を考え、 未来の子供達に伝えたいと思います。